私たち、政略結婚しています。
優しい温もり
「ようやく本当の気持ちを暴露したな。…全く、…意地っ張りで扱いにくい女だよ」
何て言われてもいい。
このぬくもりに包まれていられるのならば。
「俺を振り回して喜んで。悪趣味にも程がある」
黙ったまま顔を上げないでいる私に対して彼の文句は続く。
「いつ亜由美を好きだと言った?早合点も大概にしろってぇの。
――お前だけだと…言ってんのに」
………え…っ。
私は彼を見上げた。
見下ろすその目が目の前で揺らめく。
「あんた……だって…」
「お前さぁ、…俺の何を見てきたんだよ。誰の話を信じるんだ。俺がそんな器用で面倒な真似、するかよ」
…………あ。
――――――――――『浮気したらコロスから。愛はなくても礼儀は忘れないでよね』
『めんどくせ。…他の女に構う暇があったらお前なんか嫁にしねぇよ』
『失礼な男ね!私だって家のことがなかったら…!』
『ね、その口。黙らしていい?うるせ』
初めてのキスのときの会話が今さらながらに頭の中にふわりと蘇る。