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警察署を出た瞬間に立ち止まり佐奈の方を向いて言う。

「お前は本当にアホだな。何で俺に言わなかった?」

「え」

彼女はきょとんとした顔で俺を見上げた。

「旦那のいる女にストーカーだなんて。警察で俺の立場がなかっただろうが」

「は。何がよ」

「格好悪くてあり得なかったっつうの。恥かかせやがって」

俺が言うと彼女はみるみると怒りを顔に表し始めた。

「あんたは私の心配よりも自分の立場なのね!よく分かったわ!私の選択が間違っていたことが!」

「は。何言ってんだ」

「あんたなんかと結婚したことは一生の不覚だってことよ!」

佐奈は足をジタバタさせながら怒り狂っている。
俺はそんな彼女を見ながら目を細めた。

「はははっ。言ってろ。もっと怒ってみろ。写メるから。その怒りに燃えたバカ面を会社の皆に送り付けてやる」

「最低!今日のご飯はカップ麺にしてやる!」

「ぎゃははは!ウケる。怖い仕打ちだな。じゃあせめて麺の種類は選ばせてくれよ」

わざと怒らせるような言い方で彼女を挑発する。

「もうご飯作らないからね!悔しい!」


だけど初めに言ったことだけは本心なんだが。なぜすぐに俺にストーカーの事を言わないんだよ。
半月も付きまとわれていただなんて、自分に腹が立ってしょうがねぇよ。どうして気付けなかったんだ。
どれだけ怖い思いをしたのだろうか。誰にも言えずに一人で悩んでいたんだな、きっと…。


「……怖かったな。無事で良かったよ。置いていって、ごめんな」

彼女の頭を軽く撫でる。

「………ばかぁ…最低…」

佐奈はその目に涙を溜めながら俺を見上げていた。


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