叶わぬ恋の叶え方
溜め息のモカフラペチーノ
それからも、咲子は徳森と会っていた。

 休日に彼は彼女を食べ歩きに連れ出してくれた。

 この前みたいにパスタの時もあれば、おしゃれカフェの時もあり、親父くさい餃子屋の時もあった。金曜の夜には、彼に連れられて初めて立ち飲み屋なんていう店に行った。

 彼と一緒にいるのは楽しかった。

 彼は咲子を笑わせようと頑張ってくれる。

 彼女が喜びそうな美味しい店を一生懸命リサーチしてくれる。

 ハンサムだし、優しいし、徳森は女の子が望む素敵な要素を持っている。
 職場の仲間も彼のことをかっこいいと言っていた。

 細い腰の尻ポケットから、鍵束が顔をのぞかせているのがセクシーだ。

 彼は坂井医師とは対照的に、ガテンな男の持つワイルドさを幾分漂わせている。

 だから咲子は、彼とこんな関係を続けていくのもいいんじゃないかと思った。

 こんな素敵な人の方から自分に声をかけてくるなんてラッキーなことだ。

 やっと自分にも恋のチャンスが訪れたのだと思った。

 彼のことをもっと知りたいかもしれないと思った。

 まだ恋愛感情はないけど。

 もしかしたら好きになれるかもしれないと思った。

 病院であったあの人のことなんか忘れられちゃうくらいに、好きになれたらいいと思った。
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