酒乱のススメ
続・酒乱のススメ
「ねえ、リア。きいてもいい?」


「どうかしたの、リーナ」



 午後の昼下がり。

 取り立てて用事というものがなかったせいだろう。セシリアは、ミスティリーナの声に首をかしげながら答えていた。

 そんなセシリアの様子にミスティリーナも安心したのだろう。このところ、疑問に思っていることをぶつけているのだった。



「このところ、ウィアやジャスティンの見る目がおかしいのよね。なんだか、あたしのことを避けているようにみえるのよ。あたし、何かまずいことした?」



 ミスティリーナのその声に、セシリアは何かあっただろうかと思いだしていた。その彼女の脳裏には先日の騒動のことが思い出されている。

 たしかに、あの後ではウィアがミスティリーナを避けるのは当然だろう。なんといっても、あの時の彼女に一番絡まれ、被害を被ったのが彼なのだ。

 おそらく、ミスティリーナの気配を察しただけで隠れるようにしているのは間違いないだろう。そして、彼女の口ぶりではそれほど被害らしい被害を受けていなかったジャスティンまでもがそうだという。

 これでは、ミスティリーナが疑問に思うのも間違いない。セシリアは、思わずため息をついているのだった。



「ねえ、この前のこと覚えてないの?」


「この前って、前の集まりの時のこと?」


「ええ、そう。あの時のあなたって、手がつけられなかったのよ」



 セシリアにしても、よもやあそこまでになるとは思わずに酒を用意したという自責の思いがある。ついでに、あそこまで絡み酒だということは、隠しておいた方がいいかもしれない。そんな思いがないこともない。

 しかし、事実は事実として認識させるべき。セシリアは大きく息を吐くと、先日の話を始めているのだった。



「リーナ、悪いことは言わないわ。できればお酒はやめた方がいいと思うの」


「どうしてよ」


「だって、飲んだ時のあなたって、絶対にそばにいてほしくないと思うことを始めるんだもの。この前だってウィアにベタベタひっつきまわって、彼を困らせていたのよ」


「あたし、そんなことしてたの?」



 セシリアの言葉に、驚いたようなミスティリーナの声が重なっている。そして、すっかり困り果てたようなセシリアの顔。

 この分では、かなりのことをやってしまったとおぼろげながらも気がつきかけたミスティリーナ。この汚名をどうやって返上すればいいかと真剣な顔をして考える姿がそこにはあるのだった。



~Fin~





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