彼は、理想の tall man~first season~
chapter.02*

「――さ、みさ、おいっ、美紗起きろよ」

「っ、はいっ!?」


体を揺すられて、尚輝の声にハッとして目を開けると――マンション下の駐車場だった。


「あれ・・・・・・私、寝てた?」

「グッスリな」


今朝は早かったから――なんて心の中で言い訳して、呆れた顔をしている尚輝に気付かないフリをした。

田舎めなこの場所に、半年前に完成していたらしいマンションは、入居者が未だに戸数に対して満たされていない。

だから、かなり安く借りられた。


「どんだけ疲れてんだよ」

「ちょっと、歩き回り過ぎちゃったみたい」

「ったく、しょうがねぇな。 部屋まで荷物は持ってってやるから、自分で歩けよ?」

「うん」


なんだかんだ言っても、尚輝は私に甘い。

誕生日も生まれた時間も場所も同じ。

先に出たか後に出たかの差で、尚輝は一応私の兄って存在だ。


幼稚園から高校まで一緒の学び舎だった尚輝とは、大学で漸く別の学び舎になったくらい、ずっと一緒の道を歩んでいた。

その尚輝とは、なんの抵抗もなく、離れられなかった。

一緒じゃない環境って、私にはどうもピンとこない。
< 32 / 807 >

この作品をシェア

pagetop