Taste of Love【完】
◆過去の真実
九月の秋分の日。

高校時代仲の良かった友達の結婚式に風香は参加していた。

「おめでとー!」

フラワーシャワーとともにかかる祝福の声に、新郎も新婦もニコニコと幸せそうだ。

「真奈美幸せそうだね!」

そう風香の横で話かけてきているのは、関口由利(せきぐちゆり)だ。

由利ともクラスが一緒だったが、真奈美を通して仲が良かったのでふたりだけで遊びに行ったりする中ではなかった。

それでも何かあれば一緒に過ごし仲間だ。

「真奈美もだけど、由利ちゃんもかなり幸せそうだよ」

由利のおなかはふっくらと膨らんでいる。今妊娠七カ月だそうだ。

「もうね、おなかの中で暴れて大変なのー!」

大変だと言ってはいるが、ちっとも大変そうではなかった。

(赤ちゃんがおなかにいると、あんなに幸せオーラが出るんだ! 今日は私も幸せ!)

「さて、みなさまバルーンリリースをいたしますので、係りよりひとつずつバルーンを受け取ってください」

司会の人の案内で全員の手元に風船が配られる。

「ほら、風香」

そう言って出遅れた私に風船を持ってきてくれたのは、翔太だった。

「あー! 三栖君。あいかわらずかっこいいのね」

由利が翔太をみつけて声をかけた。

「関口は赤ちゃん生まれるんだって? おめでとう」

「そうなの。ありがとう」

そんな会話を交わしていると、司会者がバルーンを“せーの”で飛ばしてほしいという。

掛け声に合わせて手を離すだけだ。
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