熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~
めくるめく夜

インペリアルホテルの貴賓室フロア。

ファイサルは、エレベーターに乗り込むと、
貴賓室を意味する16階のボタンを押した。

これには驚いた。

私は、一瞬立ち止まってしまった。

仕事柄、これまでも、
社会的地位の高いお客様を案内してきたけれど、

貴賓室のフロアに泊まるような人を
案内したことはなかった。


旅行業に従事する者なら、

このホテルの最高級の部屋が新館の30階ではなく、
旧館の14階から16階にあることを知っている。

新しく、ピカピカした30階以上の高層階が、
一番高級な部屋ではないのだ。


オープンしたてのころのインペリアルホテルは、
旧館の16階が一番高層階だった。

ホテルが出来たころの最上階に当たるのが、
貴賓室のある旧館の16階ということなのだ。


ホテルが建てられた頃は、
財を尽くして国賓をもてなすつもりで、
内装を豪華に整えた部屋が作られた。

その時は、ほかに政府も
外国の要人をもてなす部屋がなくて、
急きょ一般のホテルに貴賓室が作られた。

それで、この部屋がいまだに重要な客をもてなしている。

迎賓館には泊まらないものの、
特別にもてなす必要のある人たち。

政府の要人、大物アーティスト、文化人など。

貴賓室の名の通り、部屋の方でも客を選ぶのだ。

「どうしたの?乗らないのか?」


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