結婚適齢期症候群
8章 合い鍵の行方
どれくらいの長い時間キスをしていたんだろう。

唇が離れた時、お互い息が荒くなっていた。

そして、二人とも汗ばんだ顔を見合わせて、なんだかわからないけれど笑った。

ショウヘイはほとんど笑顔を見せたことがないけれど、彼の笑顔はとても好きだ。

母に電話をした。

母は一瞬疑うような声で「本当に女友達?」と言った。

だけどすぐに、快諾してくれた。

これも私がもういい年齢だからだろう。

30にもなってる娘に「本当は男じゃないでしょうね?結婚の約束もしてないのに男と泊まるな!」だの母も言えないもんね。

ショウヘイとの生活は2ヶ月。

その間に私達二人の関係がどうなっていくのか全くわからない。

だって、まだお互いの気持ちを確かめ合ったこともなければ、この先のことを話したこともない。

二人ともいい大人。

あらためて気持ちをぶつけるなんてことも、プライドが邪魔をする。

ただ、この状態はとても居心地がよくて、壊れなければいいと思っていた。

それはとても中途半端だけれど。

答えを出さないで、居心地のいい状態だけをキープするなんてこと。

彼の今の状況を考えたら、そうするしかなかった。

これ以上私が踏み出したら、きっとこの居心地良く動いてる歯車が乱れてくる。

そんな気がしていた。


翌朝、私は家に荷物を取りに行き、何も変わらぬ表情で出勤した。



< 118 / 192 >

この作品をシェア

pagetop