─ Alice ?─

消えていく住人





「黒兎さん…な、んで?どうして…シロウサギさんっ…シロウサギさんは『アリスは僕だけ見ていればいいんだよ?』」




貼り付いたような笑顔で私に話かける黒兎さん。


まるで感情なんてないかのように



ただ、笑顔を貼り付けたまま近づいてくる。






『ねえ、アリス。君は僕を助ける為に此処に連れて来られたんでしょ?』



一歩、一歩、私と黒兎さんの距離は縮まっていく。




『僕を、この国を助ける為に望んでもいないのに無理矢理連れて来られた。そうだよね?』



今さら何を。正直、そう思ってしまった。







『戻りたい?…元の世界に。』






    ド ク ン 。



戻る?



戻れるの?



元の世界に。


此処じゃない、安全な世界に。




「…戻れるの?元の世界に、戻して、くれるの…?」




胸が高鳴った。若干の期待を胸に、この国から逃れられることに。




「戻してあげようか。




君のいるべき本当の世界へ。




誰もいない、孤独しかない




所詮、君には名前すらない。




そんな意味の無い世界へ





戻して ア ゲ ル ♪』
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