ブルーブラック2

5.交錯する情報



「おはようございます、神野さん」
「え?あ···お、おはよう」


翌日の朝礼の前に、いつものように百合香はショーケースの硝子を屈んで磨いていると、横に白くて細い足が歩き、止まったことに気が付いた。
そして顔をあげると同時にその人から声を掛けられたのである。


「――どうしたの··?1階でも準備あるでしょう?」
「大体言われたことは終わらせてきましたから」
「でも」


“言われたことをやるのは勿論大事だけれど、仕事を探したり貰ったりするのも必要だよ――”


百合香がそう言おうかどうか迷った時だった。


「私、万年筆にちょっと興味でちゃって」


立ちあがった百合香が美咲よりも少しだけ背が高い。
男性向け上目遣いまでとは行かないが、百合香に対しても満面の笑みでそう話しかけた。

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