現代のシンデレラになる方法

鉄板の彼シャツは危険な前触れ




先生とお付き合いさせてもらうようになって、何度か家まで送ってもらったことがある。


私が住んでいるのは単身用アパート。

築10数年以上はありそうなちょっと古めの建物で、しかも最寄り駅から徒歩20分。

もちろんそんなところだから、格安賃貸だ。

私なりに気に入っていたのだが、このアパートを見た先生は少しショックを受けていたようだった。


車内ではいつも通り他愛のない話をした。

そして家に着いたらお礼を言って車を降りる。

いつもと変わらないやり取りだった。



そう、ここまでは……。


なんと、部屋に入って電気をつけようとしてもつかないのだ。

ま、まさか、停電っ?

いや、だって、隣の部屋電気ついてたし。

ブレーカー落ちたとか?

玄関先のブレーカーを確認するとしっかりレバーは上を向いている。


そして、ようやく、一つの答えにたどり着く。


……料金未納による電気の使用停止。


最近はがきで見たのすっかり忘れてた。

これって、きっと電気止められちゃったんだ……!


真っ暗な部屋の中、1人慌てふためく私。

もう電力会社に電話しても繋がらないだろうし……。

どうしよう、とりあえずコンビニでろうそく買って……。


そんな緊急事態の中、電話が鳴った。


画面を見ると、先生からだった。


『部屋着いたか?』

「え、えっ、はい……っ」


いつもなら、こんな確認の電話してこないのに。


『何かあった?』

「え、な、何も……っ」

『本当に?』

「は、はい……っ」

『なら、いいんだ、おやすみ』


あぁ、どうしよう切れちゃう。

先生に話して助けてもらおうか……っ

意を決して、電話を切ろうとする先生に呼びかける。


「せ、せんせ……っ」

『どうした?』

「あ、あの、電気がつかなくてっ」

『外出てこれる?』


言われた通り、ドアを開けるとそこには何故か先生が。


理由を聞くと、いつも私を送ったあと、ちゃんと部屋の電気がつくまで見守っていてくれたらしい。

だけど、今日はなかなか電気がつかないものだから、電話をして様子を見に来てくれたとのこと。


「で、なんでつかないんだ?故障か?」

「い、いや。止められちゃったみたいで……」

恥を忍んで正直に話す。


「え、嘘だろっ?」

すると信じられないと言わんばかりの先生。

多分先生には無縁の事態だろう。

だけどこのご時世、現実に起こりうることなんです。


「とりあえず、今日はうちに泊まれ」

「す、すいません、ありがとう……、


……って、えぇっ!?と、泊まるっ!?


いやいやいや、カップルならこれが普通なのか……。

いや、でも、でもっ。

こんな突然お泊りなんて!


こ、こ、心の準備が……っ


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