恋は盲目 Ⅱ 〜心を見せて〜

雅樹side


俺の妹、真愛実が最近になって何度も連

絡をしてくるようになった。

俺たちの母親が、余命短いから母にあっ

てあげてほしいと電話してくる。

だが、俺を拒絶し捨てた母親に会いに行

ってどうなるというのだ。

母親の柔らかい温もり、愛を知らずに育

った俺は、いつしか女性に拒絶される事

を嫌い、優しく接し、笑みを浮かべるの

が上手くなった。

大人になる頃には、温もりと愛という幻

を求め数々の女達とその場だけの関係を

持つようにもなっていた。

そんな時に出会った女。

早希。

友達思いで優しい彼女、平静を装うくせ

に、意地っ張りで表情がコロコロ変わる。

甘え、媚びることしか知らない女達と違

う彼女になぜか惹かれ、ただ、少しから

かうだけのつもりでいたのに、いつの間

か惹かれていた。

今では、彼女無しではいられないと思う

ほど、大事な存在になっていた。

人を愛するという感覚が壊れているのに

早希といつまでもいられるだろうか?

どんな俺でも愛してくれる早希。

彼女の愛に応えたい。

そう考えるようになってきた俺は、真愛

実と会う決心をした。


《コンフォルト》

「お兄ちゃん、お母さんと会ってあげて

ほしいの。」

「俺を嫌っていたあの人が俺に会いたい

とは思えない」

「違うの…お兄ちゃん。お母さんは、お

兄ちゃんを嫌ってなんていないわ」

「違わないね。小さかった俺に(お前さえ

いなければ…)そう言われてきたんだ」

「お母さんは、小さかった時のお兄ちゃ

んと一緒に写ってる写真を大事に持って

いるの。」

どういうことだ。

なぜ、あの人が俺との写真を大事に持っ

ているんだ。

「お兄ちゃん、私との間にもう1人兄妹

がいたって知ってる⁈」

なんだって…俺の記憶にはそんな兄妹は

存在しない。

困惑する雅樹。

「知らなかったのね。…私も最近お母さ

んから聞いたの。お兄ちゃんのお父さん

との間に妹として生まれるはずだったの

。お兄ちゃんは、小さかったから記憶に

ないんだろうけど、お兄ちゃんと公園に

遊びに行った時に、お腹の子供の命をと

るかお母さんの命をとるかの大きな事故

にあったんだって…お母さんは、お腹の

子供を助けてとお願いしたのにお兄ちゃ

んのお父さんがお母さんの命を助けてほ

しいってお医者さんにお願いしたの。そ

のおかげで私がいるんだけど、お母さん

は、お父さんの判断が許せなかったって

…そして、お兄ちゃんを見ていると死ん

でしまった赤ちゃんが可哀想で一緒にい

るのが辛かったって…教えてくれたの」

そう言われると蘇ってくる記憶。
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