あのね、先生。

蓮くん side



俺が思っていた通り、加地くんは俺が付けた痕に気づいてここに来た。

俺が逆の立場だったら見つけて黙ってるわけない。多分加地くんも俺と同じことするだろうなって思ったんだ。

…あのときは簡単に手放してしまった。

だから、もう捕まえたら絶対に離さないって、加地くんに言いたくて。

だけど、加地くんに隙を見せると痛い目を見るって実感した。


…吉野先生の話を出されるなんて全く考えてなかったから。

確かに今でも彼女は俺を想ってくれてるみたいだけど、自分のせいである手前、強く断れなかった。

もしかしたら加地くんはそんな俺を見抜いてたのかもしれない。


…まぁ、いいけどさ。

やっぱり早く断るべきだった。

その場しのぎだった俺のあのときの行動のせいで、今自分で自分の首を絞めるような状況に陥ってしまった。
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