戦国遊戯

帰るべき場所

「おはよ、ゆっきー」

尾張での一件から数日がたった。さくらは目を覚ましたとはいえ、まだ心身共に本調子ではないということもあり、利のところでまだ療養中だ。まつが今帰すのは心配だといって聞かなかったらしい。時々、佐助が様子を見に行くということで、利の言葉に甘えたそうだ。

幸村は、まだ完全に回復したわけではないが、もう一人で出歩けるくらいまでにはなった。医者も、その回復力には驚いていた。

「おはよう、玲子」

微笑む幸村に、玲子はドキッとした。あの一件依頼、妙に幸村を意識してしまっている。

「ご、ごはんできたょ」

なんとなく気恥ずかしくて、思わず目線を下に移してしまう。


あー、もう!私ってば!


我ながら情けない、と思いつつ、小さなため息が出た。
正直なことを言えば、今まで人を好きになって、こんな風に、元気な姿を見られるだけで幸せになれる、なんて、そんなことを思ったことはなかった。

そっと、幸村が手を握ってきた。

「朝餉、玲子は食べんのか?」

幸村に聞かれて玲子はぶんぶんと首を横にふった。にっこりと笑って手を引いて歩き出す。

「では、行こう」

玲子は頷いて、幸村の隣を歩いた。
本当に、些細なことだけど。

嬉しくて、嬉しくて。
顔がふにゃっとなるくらいに幸せだった。
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