極上ショコラ【短】
「いい加減にして!」


力いっぱい腕を引き、和也を睨む。


「あたし、今日は仕事で来てるの」


付き合っていた頃には見せる事の無かった怒気を孕んだ態度は、彼を少しだけ怯ませたらしい。


「あの時の事なんて、もうどうでもいい。だから、もうあたしに関わらないで」


冷たく「さよなら」と付け足し、呆然としている和也を放って今度こそ足早に歩き出す。


パーティー会場に戻ると、すぐに篠原を見付ける事が出来たけど…


彼の隣には、相変わらず人目を引く女優が当たり前のように寄り添っていて、あたしなんかが近寄る隙なんて無いと感じてしまった――…。


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