未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
従兄弟の前田慶次は、両親、つまり俺の叔母とその旦那さんと共にこの屋敷に住んでいる。年は俺の一つ下で、殆ど実の弟も同然だ。更に珠(たま)という妹がいるが、二人ともぶらぶらと遊んでばかりで困った連中だ。俺も人の事は言えないのだが。


『信之さん、どうしたの?』

「慶次、悪いけど俺の書斎に来てくれないかな。袋を持って……」

『袋? ……ああ、そういう事ね。すぐ行くよ』


毎年の事なんで、慶次はすぐに察してくれたようだ。もちろん使用人達には内緒だが、俺は甘い物が苦手なんで、貰ったチョコは全て慶次に処理してもらっている。それで袋を持って来るよう彼に言ったわけ。

間も無くして慶次がやって来た。


「もう会社から帰って来たの?」

「あ、ああ」

「ちゃんと仕事してる?」

「チッ。遊び人のおまえに言われたくないね」

「そりゃそうだ」


慶次は軽口を叩きながら、テーブルの上のチョコを持参した手提げ袋に入れだしたのだが……


「あ、ちょっと待て」


俺は、ふとある事を思い出して慶次を止めた。

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