未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
次の日、俺は一応会社に顔を出したが、夕方には屋敷へ帰って来た。

俺の会社での肩書は常務取締役。しかしそれは名ばかりで、実務は殆ど何もせず、会社の運営にもタッチしていない。

社長だった父が急死した時、息子である俺を社長に、なんて意見も多少はあったらしいがとんでもない。実務経験もやる気もない俺なんかが社長になったら社員が迷惑だ。


緊急の役員会議の結果、副社長だった織田さんが持ち上がりで社長へ就任し、俺は常務を継続。順当な人事だったと思う。新社長の織田さんからは、「次は信之さんですからね」なんて言われてしまったけれども。


着替えて書斎に行くと、自然と俺の目はテーブルの上で止まった。そこに、もちろん普段は無い、赤やピンクといった派手な色合でラッピングされた箱型の物がズラリと並んでいたからだ。

ああ、今日はバレンタインか……

俺は携帯を取り出すと、従兄弟の慶次の番号をコールした。

< 19 / 177 >

この作品をシェア

pagetop