恋物語。




セットは…前とはあまり変わらない。

テーブル、ソファ、ベッド、本棚。ただ今回は黒色のものが多いってとこが唯一の違いかもしれない。それは…“彼の部屋”っていう設定のためだと思うけど。




「…知沙さん、お久しぶりっす」



「あ、はい…お久しぶりです…」


カーペットに座ると前回と同じカメラマンの彼にそう話しかけられた。



「何か…前会った時より綺麗になってません?」



「へ…っ!?」


彼のとんでも発言に私は声が裏返るほど驚く。



「あ、もしかして…彼氏出来たんすか?」



「えっ!?か…っっ」




か、彼氏って…!!いやでも“一応”彼氏はいる、けど…でも…っ




「…徳井(とくい)さーん。あんまイジメないでもらえますー?今日は俺の“彼女”なんですから」


南さんはそう言うと私の隣に腰を降ろし、あぐらをかいた。



「わーかったっつーのー。」


カメラマンの彼(徳井さん)はそう言うとカメラのファインダーを覗き始めた。



「…そうだ、知沙さん。俺のこと下の名前で呼んで下さい。」



「え…?下の名前…?」


彼は私に振り向いてそう言う。



「はい。この撮影の間だけではありますけど…俺たちは“恋人”な訳です。
だから、よそよそしくしてたら…それが写真にも写ってしまうと思うんです。」




うん…南さんの言ってることは納得できる…。“恋人”設定なのに、よそよそしく見えてしまったら…そんなの全く意味ないよね…?



「だから下の名前で呼んで下さい。俺は知沙さんって言いますから。」



「……はい、分かりました…」



「じゃあ今、呼んでみて下さいっ」



「え…!?」


彼がキラキラとした可愛い顔で言った発言に私は驚く。




い、今って…!!そんな突然…っっ





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