王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

このドレスを選んだのはウィルフレッドで、常々自慢に思ってきた乳兄妹にぴったりなドレスを選んだことに満足していたし、今日の彼はエリナに合わせてミッドナイトブルーのジャケットを選んだ。

しかし、ちょっと蠱惑的にしすぎたかもしれないと、こっそり反省するのだった。


エリナは大半の令嬢のように、男に従順で、守られ、都合が悪いときは"気絶"という技を使う女性ではない。

自分の意志があり、考えることができ、ウィルフレッドを主君として尊敬してはいても、決してひれ伏したりはしない。


エリナはなぜか当たり前のようにそうすることができて、しかもそれが鼻につくことなく、ウィルフレッドにはむしろ気持ちよく感じるし、そういう彼女を誇りに思っていた。

合わせてどこか成熟し切らない少女のような一面をもつエリナを不思議に魅力的な女性だと思うし、彼女を残してホールを離れることには一抹の不安もあったが、ウェンディを口説きに行くのに他の女を連れて行くわけにもいかないだろう。


「すぐに戻る」

「まあ、自信がおありですこと」


ウィルフレッドが本気で心を砕く女性などエリナ以外にはいないというのに、当の本人は彼の心中など知りもせず鈴を転がすように笑う。


ウィルフレッドは小さく苦笑してから、エリナに視線を寄越す男たちへの牽制のためにゆっくりと額にキスを落としてから、エリナを残して中庭へと向かった。

妹に本当の恋を教える男がいるなら、いい加減な男では許さないと、頭の隅で考えながら。
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