不機嫌なアルバトロス
色々気が張っていたせいか、発熱のだるさも手伝って、眠気が直ぐに私を襲う。



「お粥、作っておいたからね。あ、あと、会社にちゃんと連絡しなきゃ駄目だよー。今日は私が上手いこと言ったから大丈夫だったものの、もう少しで無断欠勤だったんだからねぇ」



遠くで憲子の声が聞こえた。



「…あ、お」



なくなりかけた意識の中で、自分だけに聞こえる位微かに、彼の名前を初めて口にする。


ちゃんと、呼べたら良いのに。


私は、貴方が好きなのに。


クラブにはもうきちゃいけない、なんて。


もう、他の人に触れたりなんか間違ってもしないから。


良い子にするから。


そしたら、あと少しの時間だけは、一緒に居てくれる?


そしたら、もう一回、キスしてくれる?


ちゃんと、妹になるから。


ご褒美くれる?


嘘じゃ嫌だけど。


嘘で良いから。



愛を囁いてくれる?




そしたら、ちゃんと諦めるから。



手に入れたいなんて、思わないから。



都合の良い女で、構わないから。
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