Sugar&Milk
「え? また行ったの?」
武藤くんは瑛太くんのカフェのロゴが入った紙袋をデスクに置いた。
「山本くんがどうしても行きたいって言うから。だから奢ってくれたよ。橘さんの分も」
「感謝しろー」
山本は紙袋から飲み物のカップを取り出す。
「またあの女の子に会えたから俺も満足」
誰のことか分かったから気持ちが沈む。今夜もあの子と瑛太くんは一緒に働いているのか。
「山本は女の子狙いすぎ。武藤くんまで山本みたく興味本位で行ったのかと思った……」
呆れる私に武藤くんは「新商品のシナモンロールラテってのが気になって」と申し訳なさそうな顔を向ける。
「それに、僕を山本くんと一緒にしないでほしいんだけど」
「それどういう意味だよ武藤。仕方ないだろ、あそこで働いてる女の子に興味あるんだから」
「そういうこと大きな声で言わない方がいいよ。山本くんが女好きの変態だって肯定してるようなもんだから」
「お前マジでさらっとケンカ売るのな」
山本と武藤くんのやり取りも聞き慣れているから無視して私は紙袋からホットサンドと紅茶のカップを出す。
「武藤くんの飲んでるシナモンロール? もおいしそう」
「カフェラテの上にホイップとシナモンパウダーとシナモンフレーバーのシロップがかかってるんだって」
「それ飲んだだけで全部分かったのか?」
「中身を聞いたら橘さんの彼氏が説明してくれた」
「今度は俺もそれにしようかな」
「山本は甘いの嫌いじゃなかった?」
「あの子に中身聞いたら会話のきっかけになりそうだから買うの」
あの女の子への興味を隠さない山本に呆れて言葉が出ない。