Sugar&Milk
「さっき聞いたとき彼女も横にいたんだから、また同じこと聞いたら山本くんがバカなのかって思うんじゃないかな?」
武藤くんが真面目な顔をして言うから笑って紅茶をこぼしそうになる。「ほんっとにお前嫌いだわ!」と山本はレシートを丸めて武藤くんに投げつける。
「橘、砂糖とミルク取り忘れてるよ」
「あ、ありがとう」
私は山本からスティックシュガーとミルクを受け取る。
「紅茶でよかった? 彼氏に聞いたらそれでいいって言うから」
「うん、紅茶でいい」
瑛太くんが私の好みを忘れていなかったことが嬉しい。
「カフェ忙しそうだったよ。ほとんどの客がケーキ持ち帰りで。そこそこ並んでたし」
「そう……」
忙しい中でも私のことを考えてくれていたのかな?
カップのフタを開け、砂糖とミルクを入れながら今この瞬間も私を想ってくれたらいいなと思う。
「そうそう。あの女の子、相沢さんって言うんだって」
「へー、名前知ってるってキモッ」
「キモいってなんだよ……こっそり名札見たの」
名前を知ろうとまでしていた山本に関心すらしてしまう。
「お腹すいたのを口実にして、あの子に会いに行ったんでしょ?」
「まぁね。忙しそうだからあんまり話しかけられなかったけど」
「山本って、あの子のこと本気だったりするの?」
「本気本気。かなり本気。付き合いたい」
声の調子は軽いが意外にも顔は真剣だった。
「山本って大学生でもいいんだ?」
「全然問題ない。てか前も言ったけど橘には言われたくないわ」
「それもそうだね……」