倦怠期です!
「そういえば、小沢さんにも何か渡してたよね」
「いかめんたい。あれは小沢さんからリクエストされてたやつ。村田課長にも同じのあげた」
「あ、そう」

村田課長は、施設1課の課長だ。

「冷蔵庫の中に、めんたいマヨネーズが入ってたぞ」
「白いメシにめんたいマヨかけるんや。めちゃうまいでー」
「えっ?そうなんだ」
「てか有澤、また関西弁出た」
「あぁ。福岡の実家に帰ったついでに、神戸にも行ったからなー。つい方言出るんだよな」
「有澤さんって、大学は神戸だったよね」
「そ。俺はエセ関西人」

と言ってイヒヒ笑いをした有澤さんは、新入社員研修のとき、「気が緩むと方言が出る」と言ってたよね。
ここ数ヶ月はあまり聞いてなかったし、そもそも社内では全然方言出ないけど、年末年始に里帰りをしてからは、方言がよく出てる気がする。

「神戸行ったのか」
「年明けにな。大学んときの友だちと、バンド組んでた仲間にも会った」

そういえば有澤さんは、大学生のときに、ロックバンドのボーカルをしていたんだよね。

「ねえ有澤さん」
「なに」
「なんでボーカル担当だったの?」
「演奏苦手だし、貧乏だったから」
「は?」

「ボーカルだと楽器いらんやろ」
「あぁ・・なるほど」
「それに俺、一人暮らしだったから、自由に使える金はあまりなかったんだよ。ま、俺以外にも一人暮らししてたメンバーはいたけどな。みんな貧乏だった」と有澤さんは言うと、当時を懐かしむように、遠い目をしてフッと笑った。

その表情が、私よりもはるか大人に見える。

「もちろん親から仕送りあったし、バイトもしたぞ」
「何のバイト?」
「カテキョがメインで、後はチャイニーズレストランで皿洗いしたりー」
「有澤の場合、皿洗いより、ウェイターとかホストの方が似合ってる」と言う水沢さんの発言に、有澤さんと私はブッとふき出す。

「なんでホストやねん!」
「ホストってか、裏方より表に出る仕事!でもおまえ、しゃべり上手だしで気配り上手だからさ、意外と向いてんじゃん?」
「うーん・・・じゃ、次の転職先はホストも考えとこー」
「ええっ!?有澤さん、タハラ辞めるの!?」
「辞めんわ!」

なんて3人でワイワイしゃべりながら食べためんたいスパゲティは、本当においしかった。


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