年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
私が立ち上がると、大輔くんが預けてあった荷物とコートを持って来て手渡してくれた。

「遅い時間になっちゃったので、気をつけて帰ってくださいね。あと、さっきも言ってたんですけど、迷惑じゃなかったらまた連絡……」

そこまで言ったところで、大輔くんのお腹がぐう、となった。
妙に店中に響いて、はたっと動きを止めた大輔くんが恥ずかしそうにうつむく。

「すみません……」

しゅるる、と小さくなるみたいに体を縮こませた大輔くんが、なんだか可愛い。


「もしかしなくても、ご飯、食べてないんだよね?」
「はあ、まあ」


辻井さんも笑いを堪えながら言う。

「お前最近、昼もあんまり食ってないだろ? どうした? 金欠か?」

「ちょっと、予定外の出費がありまして……。
一日百円で凌げば今月は何とかなると思うんですけど」


「百円っ!?」


小学生のお小遣い以下のその金額に思わず声がひっくり返った私に、大輔くんが苦笑いを向ける。

「ちょっとウィッグ買いすぎちゃって。意外と百円でもなんとかなりますよ?」

いやいや、百円でなにが買えるのか。二十二歳の男の子なんて食欲の塊だろうに、それじゃあ食費にすらならないだろう。そんな生活続けたらいつか倒れるんじゃ……。
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