年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
きれいだな、とぼんやりと大輔くんの横顔を見ていると、顔を上げた彼と視線があった。

不意にどきっとして目を逸らすと、彼が一歩、私に近づく気配を感じる。え、なに、と心の中で動揺しかけた私に、大輔くんは自分のマフラーを外して、私の首にかけた。

なにげない仕草で、マフラーを巻きつけていく。私は一人、勝手にドキドキしながら、顔だけはなんとか平静を装った。


「……ありがと」

動揺を隠そうとすると自然とぶっきらぼうになる口調に、大輔くんは気にも留めずに一言、いえ、と柔らかく笑って答えた。



家まで送ります、と彼が言った。近いから一人でいいと私が断ろうとすると、すぐにその笑顔がむくれていく。

「短い距離だろうと、この時間に一人で歩くのは危険です」

「子供じゃあるまいし、大丈夫だよ。いつも飲んだ後は一人で歩いて帰ってるし」

「それが危ないって言ってるんです。沙羽さん、ちょっと無防備すぎますよ? あの雨の日だって、あんなに酔っ払って一人で歩いて、あげく道端で座り込んでるなんて、変な男に捕まったらどうするつもりだったんですか?」

それはまったく正しくて、私には一言も反論できない。あの状態で誰かにお持ち帰りされてたら、相手がどんな男であれ絶対抵抗できなかった。


「いいから素直に送られてください。はい、行きますよ」


軽く肩を押されて歩き出す。

その少し過保護な感じがくすぐったくて、思わず顔がほころんだ。

きちんと女の子扱いされている、その感じがたまらなく嬉しい。
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