食人姫
「良く化け物に食われなくて済んだね……その小屋に二人でいたんでしょ?あ、もしかして大人が誰か付いていた?」


「誰もいねぇよ!あのジジイ、俺達を化け物に食わせようとしやがった!実際食われるかと思ったけどよ、大輔が持ってた……」


と、そこまで言った時、俺は哲也に小さく首を横に振って、それ以上言うのを止めさせた。


「大輔が持ってた?何?」


すかさず話の続きを聞こうとする直人。


これは、まだ今夜も使うかもしれないから、化け物を退ける力があると教えられない。


反対派の直人に知られたら、それが爺ちゃんの耳に入ったらきっと奪われるだろう。


それだけは避けたい。


「お、俺が持ってた運のおかげで、化け物が小屋から出て行ってくれたんだよ」


「ふーん、嘘臭さしか感じないけど、食われずにいるって事は、まあ何かあったんだろうね」


哲也が余計な事を言ったから、完全に疑ってるな、これは。


それでも、指のおかげだとはさすがに誰も思わないだろうけど。


「それにしても、私らが知らないところで随分無茶してたんだね、あんた達。特に大輔は化け物に食われそうになったのに、よく夜に麻里絵の家に行こうなんて思えたもんだよ」


未来が呆れたように俺達を見て口を開いた。
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