最後の恋にしたいから
「ああ、コーヒー派。眠気覚ましにもなるしな」

課長はそう言うと、苦笑いをした。

そっか。コーヒー派なんだ。

だったら……。

「課長、お一ついかがですか?」

控えめにパックを差し出すと、彼は表情を明るくした。

「ありがとう。頂くよ」

手を伸ばし受け取る課長の指が、私に少し触れた。

本当にちょっと触れただけなのに、顔が熱くなるのが分かる。

一瞬でも分かるくらいに、課長の手は温かい。

「どうかしたか? なんだか、顔が赤いけど」

どうやら課長には、私の赤らむ理由が分からないらしい。

本気で心配そうな顔を見て、自然と口に出していた。

「だって……。課長の手が触れたから。ドキドキしちゃったんです」
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