なんでも屋 神…第一幕
リアシートを振り返ると、一葉は幼い顔を見せながら微かに寝息をたてていた。



「お前はまだ気付いてないか…俺は目を瞑っても見えるぞ。ウチをこの街のトップの座から引き吊り下ろそうと、闇に紛れて画策している阿呆共の群が蠢いている姿がな。だから今、俺が殺られる訳にはいかないんだ。」



そう言い終わると、兄ぃは窓から黒く染まった街を眺め始めた。



…[神堂組]に喧嘩を売る奴等か…確かに阿呆だ。



それから車内は静まりかえり、萩と言うチンピラは、バックミラーで兄ぃを何度も盗み見て冷や汗をかいている。



その意味が分からないまま着いた先は、街の喧噪から離れた所にある、日本料理の[白桜]だった。
< 123 / 309 >

この作品をシェア

pagetop