嘘婚―ウソコン―
「“ブツ”って…何か怪しいものみたいなんだけど」

千広はそれを手に取ると、確認をした。

「確かにいただきました、離婚届」

離婚届を見せてお礼を言った千広に、
「千広も充分怪しいよ、“確かにいただきました”って」

園子は苦笑いをした。

千広は胸ポケットからボールペンを取り出すと、妻の欄に自分の名前を書いた。

「よし、後は周陽平に離婚を要求するだけだ」

そう宣言すると、ピンと離婚届を張った。

「大丈夫?」

園子が心配した表情を見せたので、
「大丈夫に決まってる!」

千広は笑顔で、明るく言った。

――チリリン

千広がそう言った瞬間、ベルが客の訪問を告げた。
< 86 / 333 >

この作品をシェア

pagetop