空しか、見えない
 今朝早くに、岩井海岸駅の前で解散した。純一の運転する車には本当はフーちゃんも同乗するはずだったが、結局先に出発したのはふたりだけになった。
 マリカには、夕方から始まる仕事が、珍しく恨めしく思えた。あと一日くらい。いや、数時間でもいいからみんなと一緒に過ごしたかった。
 嵐が去った後の岩井の浜辺。空が白み始めると、懐かしい弓なりのカーブの向こうから、若い子どもたちの弾けるような歓声が響いてくるような気がした。
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