プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
「ねえ、美羽、あなたにお願いがあるの」

 始まりはセクレタリールームの上司、ミシェル・モルガンから頼まれたことだった。

 とても神経質でいつもピリピリしている彼女が、このところ穏やかな理由は、恋人との婚前旅行みたい。

 恋人は日本にとても興味があるそうで、京都へ行きたいと言っていた。

 どこかおススメがあるのならアドバイスを聞きたいと言われて、週末約束したのだけれど、いざ、週末を迎えてみると、彼女の本当の頼みごとは別のことだった。

 初夏のカフェテラスで二人揃ってロイヤルミルクティを楽しんでいたアフタヌーン。

 京都行きのパンフレットを広げた後、ミシェルは少し待ってと言って近くのショップに入る。何だろうと待っていると、彼女は花篭のようなバスケットを抱えてやってくると、テーブルの上にそれを置いた。

「美羽なら任せられると思うのよ。この子、5日間でいいから預かってもらえないかしら?」

 ミシェルがバスケットをテーブルに置いて、そっとケージを開くと、ひょっこり顔を出したのはアメリカンショートヘアの子猫で、ケヅヤがつやつやとしていて丸い瞳が愛らしかった。



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