プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
「でしょう? このところペットホテルも安心出来なさそうだから」

 そう。このところ強盗が入って高級ペットが狙われる事件があったばかり。さすがにそうい事情を聞いてノーとは言えない。

 でも、待って、潤哉さんはどう言うだろう。

 ミシェルのブラウンの瞳が期待を込めて見ている。子猫はふあーと欠伸をしてスリスリと掌に頬ずりをしてきた。

「見て。美羽にもうなついているわ」
「ちょっと相談してみようと思います。ダメ……とは言わないと思うけど」
「きっとそうね。美羽には甘いもの」

 ミシェルが上司の顔に戻る。そして私を冷やかした。

「意外なのよ。支社長が甘党だったなんて。確かにハンサムだけど……美羽のようなキティが恋人だなんて」

 キティとは可愛い子猫ちゃん、という意味。良くも悪くもミシェルはよく使う。叱るときも褒めるときも。

「私も未だに自信がないときがあるんです。彼に相応しいのかどうか」

「あら、お似合いよ。どちらかと言うと、支社長の方があなたに惚れこんでいるように見えるけれどね。愛妻家はいいわ」

 ミシェルは言って、子猫をバスケットに入れた。

「この子の名前はなんて?」
「ウィルよ。男の子なの」

 にっこりとミシェルは言った。


< 33 / 137 >

この作品をシェア

pagetop