月夜の翡翠と貴方
「……今だって、別にフード被っても構わないんだぞ?」
思わず、口をぽかんと開けてしまう。
どうしてこの男は、こんなにも……
私は下を向き、ゆっくり首を横に振った。
「……大丈夫。心配、ありがとう」
「………そ?んじゃ、行くか」
…掴まれる手。
繋がる両手。
村の景色も、その雑踏に紛れて歩く、この心地も。
…全てが、新鮮だった。
*
その後少しだけお金をもらい、ルトを店の外に待たせて、私は下着を買った。
それから、これからルトと旅をするにあたって、必要なものを買った。
費用の面を気にしたが、ルトは笑って心配いらない、と言った。
何故、とは訊かなかった。
私は、訊ける立場にない。
彼が友人として、と言っても、私達は所詮赤の他人だった。