想 sougetu 月
「月子?」

 起きてたらしい斎が部屋に入って来て、私の側に近寄る。

「ベッドから落ちたのか? 大丈夫?」
「ん……。斎は起きてたの?」
「あ、ああ。夕食食べてなかっただろ? 今準備してるからちょっと待ってろ」

 こんな深夜に夕食?
 そう思ったけれど、斎は健康を維持するには食生活から……という考えなので、たとえ遅くなったとしても、斎は健康を考えて夕食を作ってくれたのだろう。

「あのね。喉が乾いたし……。それにお風呂入るから……」
「……そうだね。わかった」

 私の言葉を聞くと斎はかがみ込んで、私の体の下に手を入れてきた。
 何をするつもりなんだろうか?

「斎?」
「月子、ほら、ちゃんと捕まって」
「え? あ?」

 持ち上げられて慌てふためく私を無視し斎は私を抱き上げた。
 いわゆるお姫様抱っこっていうやつだ。

「ほら、暴れない。いくら俺でもちょっと頑張っちゃってるんだから」

 ちょっとよろめく斎に落とされるのではないかという恐怖から、斎の首にしっかりと捕まった。
 
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