私を壊して そしてキスして

予想外に彼の喜んだ顔を見た私は、なんだか安堵していた。

あんな醜態をさらした私が、こんなことくらいでお詫びできるとは思ってはいない。
それでも、彼が喜んでくれるのなら、少しは役に立てる気がする。


結局、着替えのなかった私は、彼のダボタボの服を借りて洗濯をし、近所のスーパーには彼が行ってくれた。


「菜那、トマトはいくついるんだ?」

「一つでいいですよ?」

「パンは何枚切り?」

「翔梧さんの好きなので」


スーパーから電話をかけてきた彼は、仕事の時とはまるで違う顔。

気が付けば、クスクス笑っている自分がいる。
こんなこと、久しぶりだ。



< 40 / 372 >

この作品をシェア

pagetop