私を壊して そしてキスして

彼が帰ってくると、私は早速キッチンに立った。


「体調は、大丈夫なのか?」としきりに心配する彼に、「大丈夫だから座っていてください」とお願いする。

けれど落ち着かないのか、隣に来てコーヒーを淹れ始めた。



「菜那ってすごいんだな」


ただ目玉焼きを焼いているだけでそんなことをいう彼に、やっぱり笑ってしまう。


「どこがですか? こんなの小学生だってできますよ。今度はもっとちゃんとしたものを作りますから」


あっ……。

彼の帰らなくていいという言葉に、どこか甘えている自分に気が付く。

ボロボロな私を放っておけない彼の優しさに、甘えていてはいけない。



< 41 / 372 >

この作品をシェア

pagetop