キモチの欠片

なんで俺はあの時、ゆずを避けてしまったんだろうと心底後悔した。

後悔先にたたずとはよく言ったものだ。

自分の中でいろいろ葛藤があり、もがき苦しんだ。
ようやくそれを消化できるようになり、久しぶりに話しかけた時、今度はゆずが俺を徹底的に避けた。

好きな人に避けられることがどんなに辛くて苦しくて悲しいことか、バカな俺は自分が経験して初めて気付いた。
一番そばにいたのに、手の届かない存在になっていた。

やってしまったことはどうにもならず、無情にも時は過ぎていく。

ただ、遠くからゆずを見つめることしか出来なかった。

俺には決して見せてくれない笑顔を他のヤツに向ける。
それが悔しくて歯がゆくて、何度唇を噛みしめたか分からない。


高三の受験の時期、俺は地元の大学に進学を決めた。
てっきり、ゆずも地元の大学か短大に進学するだろうと思っていたが、直前になり県外の短大へ進学すると人づてに聞かされた時は愕然とした。


『嘘だろ、』口からポロリと漏れた言葉。

俺にとってはまさかの出来事だった。

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