キモチの欠片

俺は地元の大学へ進学し一人暮らしをしながらそれなりにキャンパスライフを満喫していた。
仲のいい友達と騒いだりバイトしたり、適当に遊んでいた。
正直、女には不自由しなかった。

でも、なぜか満たされない。

その理由はただ一つ、ゆずがいないことだ。

高校の時は避けられてたけどゆずの姿を視界に捉えることは出来たけど、ここにゆずの姿はない。
俺にとって、どれだけゆずの存在が大きかったのか改めて実感した。

ゆずに会いたい。
俺の想いはそれだけだった。

意を決して、ゆずの友達に居場所を聞いたことがある。
どうせ、教えてくれないだろうとは覚悟していた。

案の定、凄い形相で睨まれ『あんたに柚音の居場所を教える訳ないでしょ』とバッサリ切り捨てられた。
それは当然の反応だよな、と。

俺の親とゆずの親は仲がよかったけど、流石に親に聞くのも照れくさくてそれだけは出来なかった。
今思えば、もっと早く変なプライドなんか捨ててゆずの実家に行けばよかったんだよな。

< 131 / 232 >

この作品をシェア

pagetop