私は彼に愛されているらしい2
「良かったね。」

「はい!凄く嬉しいです!!」

「東芝さんは厳しいってよく聞くけど有紗にとってもそうなの?」

みちるにそう言われて有紗は少し考えた。

確かに東芝の評判は厳しい、キツイと少し辛めのものが多いのは事実だ。しかしそれ以上に東芝が優秀な設計士であるという高い評価の方が強いのは確かにある。

教育係という立場に置かれているが、東芝と有紗が同じ部位を担当している訳ではない。一応は有紗1人に担当させてもらっている部位であるということを前提に東芝が兼任の様に気にかけてくれているのだ。

つまり東芝の担当が人よりも1つ多いことを意味していた。

「言葉が優しいかと言われれば答えにくいですけど、高い負荷の中で私の部位も見てくれているという点では感謝しかありません。それに教えてもらっている立場なので不安はありますけど不満はありませんね。」

「あら、男らしい。」

「そうですか?みちるさんの方がよっぽど男らしいと思いますけど。」

「何言ってるの。設計士の方が厳しいじゃない。」

「だってあの片桐さんのムチを受けてるんですよ!?男の子ですけど何人か泣いてる同期見ましたもん。」

「最近の若い子は優しいからね。」

噛みしめるように呟くと何度となく頷いてみちるは頬に手を添えた。その言葉が腑に落ちない有紗は不満の声を漏らして眉を下げる。

「みちるさんだってそんなに変わらないじゃないですか。」

「2年経てば消費税だって上るの。」

「えー?どういう主張ですか。」

「私にしてみれば有紗とみちる、どっちも同じ様に見えるけど。」

よく分からない言い合いを止めるように舞の言葉がグダグダな空気を裂いていく。いつものような呆れ顔となんとなく感じる怒られている空気に有紗とみちるは小さくなった。

確かに舞が軍を抜いて年上だ。

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