鬼上司?と嘘恋から始めるスイートラブ
「えっ?!今何て言ったの?」


七月十二日、月曜日。夏バテでイマイチ食欲がないときにはこれだと、特売の豚肉のロース肉を片手に帰り、暑さにも負けずひたすらとトンカツを揚げた。

熱々のトンカツはやっぱり食欲をそそる。それにてんこ盛りのキャベツをお皿に盛り付ける。仕上げは豆腐とわかめのお味噌汁にキラキラ輝く白いご飯。

トンカツ定食の出来上がり。我ながら今日はよく出来上がったと思う。冷めないうちに、部屋にいるお父さんを呼んだ。


いつもならトンカツだと嬉しそうに尻尾を振ってくるお父さん。だけど、今日は心なしかあまり喜んではいない。それどころかなんだか言いたげな表情。

気にはなったもののあえて、口にすることはなく、黙って座るお父さんの前に私も座った。それなのに、箸をつけようとはしないお父さん。体調でも悪いのだろうか。

「食べないの?冷めるよ。それとも具合悪いとか?」

「いや、食べる」

煮え切らない態度に少し、ムッとしたけれど、せっかくの揚げたてのトンカツが冷めてベチャベチャになってしまうのは嫌だ。お父さんのことは放っておいて、先に食べることにした。

トンカツを頬張ると、そのまま白ご飯も一緒に食べる。うん、やっぱり揚げたてのトンカツは最高。早く食べればいいのに、お父さん。そう思いつつ、二口目を頬張ったとき、お父さんが意を決して私にこう言った。



「美晴、お父さん再婚しようと思うんだ」
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