鬼上司?と嘘恋から始めるスイートラブ
ぶほっとむせた後、聞き返すとお父さんはさっきまでの緊張感から解き放たれたのか「やっと言えた」と呟いたあと、お箸を手にし、トンカツを頬張りはじめた。


「ちょっと!自分だけすっきりしたような顔をしてトンカツ食べないでよ!再婚って何?」


「いやぁ、美晴も二十歳を過ぎたし、そろそろいいかなと思ったんだ。それにしても美味いな、美晴のトンカツ」




大口を開けてトンカツを頬張るお父さん。確かにうちのお父さんは、かっこいい。私のくっきりとした二重まぶたはお父さんの遺伝。


鼻筋だって通っているし、まず年齢より確実に若く見える。


何度か、家に若い女性から連絡がきたこともあったし、家の前で告白されている姿を見たこともある。


でも、お父さんはお母さんのことが、大好きで亡くなった後も、ずっと愛しているからその人たちにお断りをしていることも知っていた。


私は、そんなお父さんが好きだし、亡くなった後も一途に思い続ける姿に心を打たれていた。私も誰かをそんな風に一途に思いたい。そんな風に思われたいと。


それなのに、私が成人したから再婚なんて。お父さんにはお母さんだけだと思っていたのに。
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