家へ帰ろう
とぼとぼと肩を落とし、なんとなく新宿駅まで戻ってきた。
アルタのでかいテレビは、賑やかに情報を垂れ流している。
行く当てのない俺は、その画面を少しの間ぼうっと見上げていた。
時間ばかりが過ぎていき、夜はどんどん俺を暗闇の中に引っ張り込んでいき、否応なく不安な心を煽っていった。
楽しそうな笑顔で話す芸能人の顔は、なんだかいつも以上に遠く感じてテレビ画面から目を逸らした。
人を掻き分け、音の洪水を振り切るように新宿の改札へと向う。
来た時と同じように、山手線に乗り。
気が付けば、東京駅のホームに立っていた。
右手には、田舎までの切符。
ホームのベンチに座り、少しの間その紙切れを眺める。
それから、目の前を行き来する人たちを眺めた。
スーツ姿のサラリーマン。
ブランドのバッグを持つ、田舎にはいないおしゃれなおばちゃんたち。
そんな中に紛れて見える、家族や恋人たち。
それは、俺と一緒の雰囲気を持っているようで、全然別の人間たちだった。
どう見ても、俺みたいに田舎から飛び出してきたような人なんて居ない。
大きなスーツケースを転がして引いていても、田舎へ帰るというよりは、どこかへ旅行に出かけるといった雰囲気だった。
俺は、あの人たちと違うんだ……。
何の迷いもなく、楽しそうに歩を前に進めて行きかう人々との違いに唖然とする。
俺は、ただ東京に出ることだけを夢見て、目標もなくたどり着いたこの場所で途方に暮れている。
ここにくればなんとでもなるなんて、本気で思っていた。