聖なる夜の願いごと
ご機嫌な副団長と不機嫌な国王




デュークがシルバを訪ねて執務室を訪れた頃、執務室は最悪の空気感を漂わせていた。

執務室の外でおろおろと中の様子をうかがっている家臣たち。

いつも間を取り持ってくれる宰相は席を外し、皆執務室に入るのを躊躇っているのだろう。

書類を持って立ち往生している家臣たちの横を通って執務室に足を踏み入れるデューク。

すると、執務室の椅子に深く座り込んだこの部屋の主が不機嫌そうに眉間に皺を寄せて書類をめくっていた。




部屋に入る前から大体の予想はついていたが、今日は一体何をしたんだエレナ。

犯人をエレナと決めつけるのは、シルバが不機嫌になる理由はほとんどエレナが原因だからだ。

冷徹冷酷と呼ばれていたシルバが不機嫌な表情に見えるのは慣れているが、エレナがかかわるときは不機嫌というか拗ねているようにも見える。

今はまさにそんな顔をしていた。



デュークは溜息を吐きながら、執務室の扉をわざとらしく叩く。

コンコン、と叩かれた小さな音に、シルバが視線を上げると、ますます眉間に皺が寄った。




「何か用か」

シルバの第一声にガクッと肩を落とすデューク。



「それが久々に会った従兄弟に投げかける言葉か?そう喧嘩腰で突っかかるなよ」

「煩い。しょっちゅう帰ってくるお前に挨拶も労いの言葉もない」

久しぶりに王城に顔を出したというのに、こうも片っ端から冷たくあしらわれては多少の意地悪もしたくなる。

シルバの機嫌の悪さを探るついでに、少しふっかけてみるか。


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