スーツを着た悪魔【完結】
深青――
そうすると、自然に彼の名前を呼びたくなって……
「みさ、んっ……」
けれどまゆの唇はそのまま塞がれてしまった。
突然のことに驚き、彼の腕の中から逃れようとしても、深青の大きな手がしっかりと腰を引き寄せ、もう一方の手がまゆのあごをつかみ離さない。
「ふぁ、あっ……」
ねじ込まれる舌に蹂躙され、うまく息が出来ない。
どうして?
私のこと嫌いになったんじゃないの?
あんなふうに部屋を飛び出したのに、どうしてキスするの……?
体から心まで飲みこまれそうで、目眩がする。
閉じたはずのまぶたの裏に、激しく火花が散った。
「まゆっ……」
ほんの一瞬唇が離れる。
「深青、なん、でっ……どうしてっ……」