スーツを着た悪魔【完結】
パーティーといっても、業界主催の懇親会でカジュアルな集まりだ。正装の必要はない。
ドレススーツに身を包み、アスコットタイを慣れた様子で結ぶと、深青はそのままソファーへと崩れるように腰を下ろす。
しばらくそうやって何も考えずに天井を眺め、ぼうっとしていると、ドアがノックされる音が室内に響いた。
立ち上りドアを開ける。すぐ目の前、廊下に着飾ったまゆが立っていて、思わず息を飲む。
まゆらしい、淡いピンクのドレスだ。シャンパンゴールドのストラップパンプスも、よく似合っている。
さっきはどうなることかと思ったが、ちゃんと自分を美しく装えるまゆの中には確かに理性がある。
自分が何かへまをしたのであれば、こんなに愛らしい姿を見せてくれるはずがない。
深青はなんだか嬉しくなって、まゆの手を取り部屋の中へと入れ、顔を覗き込んだ。