スーツを着た悪魔【完結】
「おやすみ、まゆ」
「おやすみなさい……」
二人は身を寄せ合い目を閉じる。
「――」
まゆのアパートの外は、ほとんど人通りもない。
お互いの静かな息遣いが聴こえるだけの、とても静かな夜だ。
こうやって身を寄せ合って眠るのは久しぶりで。
深青はまゆが緊張しているのに気付いたからこそ、それを意識しないようにしていたのだが――
しばらくして、ふと自分に向けられる視線に気づき目を開けると、まゆの黒い瞳にじっと見つめられていることに気付いた。
「どうした?」
「お……お願いが、あるんだけど……」
「お願い?」
たどたどしいまゆの声に、お願いだなんて珍しいこともあるものだと、深青は体をひねり、不思議に思いながらまゆと向かい合った。