依存~愛しいキミの手~

裏の顔

初めて近くでまじまじと見るけど、男子が騒ぐだけあるわぁ。


知美を観察するように、ジーッと見つめていたら目が合った。


にこっと口角を上げ微笑んでくれた。


「とりあえず、…吸う?」


微笑んだ顔がかわいすぎて、タバコの箱を差し出し冗談を言って照れを隠す。


なんてね、と言う前に、知美の指がタバコに伸びた。


え…!?


慣れた手つきで火をつけ、肺まで煙りを送り込む知美。


タバコなんか吸うわけないと思っていたから、かなり驚いて目と口を開きながら固まった。


「あははっ、私だってタバコくらい吸うよ」


俯きながら知美が笑った。


「いや、充分意外だよ」


私がタバコを持つ手の小指で、知美のタバコを指差した。


「学校じゃ真面目にやってるからね(笑)」


知美が意味深な言葉と笑みを浮かべる。


学校じゃ…?


「…ねぇ、あすかちゃんこの前歌舞伎町にいたでしょ?」


!?


私は知美の目をじっと見た。


知美は少しの間私の目を見て、視線を隣の茜に移す。


茜はハテナマークを浮かべた表情をして、私と知美を見た。





…歌舞伎町って…


金曜のこと?それとも土曜のこと…?


どっちか分からず、どっちにしろあまりバレたくないことなので私からは何も言えない。


そんなことを考えている間も私は知美から目を離せずにいた。


チラッと私を見て、タバコの煙を吐き出した。


「区役所通りのビルにいたよね?」


!!


知美は笑顔で言ったが対照的に私の顔は強張った。


何で知って…!?


…まさか、知美もあの場にいたの…?


いや、まさか知美が…


タバコの灰がスカートの上に落ちたことにも気づかないほど、色んな考えが頭を駆け巡る。
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