【短編集】フルーツ★バスケット
ゴメンネ
「どうぞ」
「ありがとう、ございます」
差し出されたハーブテイに口を付け、ゆっくりと心も落ち着きを取り戻しつつもあるが、
今、自分がいるこの状況が、まだ信じられない。
「そんなに硬くならないでいいよ。
此処は、僕の家だからね」
「は、はい」
否、だから緊張するんですって。
高い天井に、一声が響き渡る程の奥行き。
大きな窓から射し込む月明かりと、その先に見える木々の影。
こんな豪邸だけでもビックリなのに、此処が蒼くんの家っていうんだから。
もちろん、お屋敷に使えるメイドさんたちもいるから、二人っきりってわけじゃないんだけど。
っていうか、メンバーもいるし。
あたしが此処にいるのには、訳があるの。
それは──
「ねぇ、君は僕たちの演奏、好き」
大好き。
コクリ、と黙って頷いた。
「音楽に自信は?」
「少しだけなら」
って言えるのかな。
小学校の時に少しだけエレクトーンをやってだだけなんだけどね。
「決まりだな」
な、何?
「ざけんな!!
俺は認めねぇ」
「でも、欲しいよな?」
「オレは興味あるぜ」
ちょっと、説明もなしに三人で議題しないでよ。
ふっ、と柔らかい笑みを蒼くんに向けられた。
まるで、心の中を見据えているかのように。
「説明するから、家来て」
断る理由も見つからず、そのままノコノコ、とやって来てしまった。