さよなら御伽話(メルヘン)またきて現実(リアル)【完】
メモ帳に自分の競技を控えるべく、赤いシャープペンを手にする。
しかしカチカチカチと数回ノックをしてみるも、なぜか芯が出てこない。
中身を見ても心の補充はしてある。とうとう壊れてしまったのか。

ちっちゃな赤い靴のチャームがついたシャープペンは、合宿の時に和泉川先輩に買ってもらって以来、ずっと優先的に愛用していた物だ。
使用頻度が高かったから、そろそろ寿命がきても仕方がなかったのだろう。
でもこれ可愛いデザインだから捨てないで、部屋のペン立てに飾っておこうかな。
そう決めたところで授業終了のチャイムが鳴り、私は次の授業が始まるまで馴染みの面々と他愛もないトークを楽しむことに。


「あれ、お前今日はジュース買いに行かなくていいのか?」
「あっ、忘れてた」


昨晩のお笑い番組について盛り上がっていたら、輪にいたミツルにそんなこと訊ねられ、私は慌てて椅子から立ち上がった。
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