さよなら御伽話(メルヘン)またきて現実(リアル)【完】
歩きだしてから一番最初の曲がり角を進むと、明るいカラーリングのアイス屋さんが見えてきた。
さて、念願のロイヤルプリンセスアイスを味わうとしますか。
唾液が分泌されるのを感じながら胸を躍らせていると、ふいに和泉川先輩が私の方を見て綺麗に微笑んだ。


「これでもお前にはかなり感謝してんだよ」
「へ」
「ありがとな」


そう言った和泉川先輩のとんだ不意打ちに、私は面喰ってしまう。
一瞬自分の聴覚に異常がないか心配してしまったほどだ。

和泉川先輩の口から、私に向かってちゃんとお礼を告げたのなんて初めてじゃないだろうか。
いや初めてじゃないにしても、こんなに綺麗なお礼は初めてだ。
綺麗なお礼ってなんだって感じだけど。

これは空から氷のツブテでも降ってくる恐ろしい前兆かもしれない。
ああもう、貴重な音声を録音しそこねてしまった……!
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